新・メイドちゃんがやってきた(8)
9月末、ネパールへ旅行に行ってきた。出発の日の朝もメイドのサトちゃんは掃除に来ていた。月末だし給料をあげた。すると、またもやサトちゃんが私に驚きを与えてくれた。

9月はお気に入りのグラスを立て続けに2個割られ、しかもそれを売っている店はもう無いので買い足しもできず、涙した。まぁ、形あるものが壊れるのは仕方ない。一回目に割った時、軽く注意した。その後もあまりにも食器の扱いが雑なので、静かに洗うよう注意すると、数日後に2個目を割った。がちょん。

というわけで、9月の給料からグラス代として100ルピーを引いた。引いておかないと学習しないから。あと無断欠勤1日分も。それでも連日に及ぶ派手な遅刻分は引かずにいるんだから、かなり優しい雇い主だ、私。しかも我が家は夫婦ともども家を空けることが多いので、その間はずーっと休みを与える。10月などは半分休み。喜べサトちゃん。それでも私は給料全額払ってやるんだぞ。有給だぞ。少しはこの待遇を感謝しろ!引かれた給料をみてサトちゃん、とりあえずグラス代については納得した模様。ところが、次に口をついて出た言葉が仰天。

「給料を2500ルピーにあげてけろ」

ひィー。寒い…寒すぎる。デリーはセカンドサマー真っ最中で暑いっつーのに、汗がどん引きだよ、あたしゃ。あんた、どの面さげて給料あげろっていってんのさ。サトちゃん曰く「最初と話が違う。家は広いし、掃除、洗濯、食器洗い、アイロンがけまでしている」んだそうだ。

へ~。って、おい、最初の話どおりじゃないかよっ。家は契約する時の話し合いで全部見せたし、仕事内容なんてメイド仕事の基本だろがっ。しかも紹介状も無い、「窓」とか「鏡」程度の英単語も知らない、ヒンディの読み書きも出来ないのに、仕事ができるというアピールを信じて最初から高給で雇われたことはすっかり忘れ去り、僅か3回目の給料で昇給願いとは、油断もすきもありゃしねぇ。これくらい図太くないと生活費の高いインドの都会では生き抜いて生けないんだろうな。さすが3児の母だ。私もこれくらい図太く生きよう。ナオミ心の手帳にメモメモ…

って、メモなんてしてる場合じゃない。我が家に前泊していた友人2人と連れ立って、いざネパールへ出発しなくては。家の前ではドライバーの光GENJI赤坂君(似)が待機している。しぶといサトちゃんはまだ何か言いたげだったので、家の前に出して赤坂君に通訳させ、その隙に我々も車に乗る準備をする。


その時。ご近所の日本人マダムが2人揃って登場。そのタイミングたるや、吉本新喜劇並み。あんたら、どっかから見てただろうと突っ込まずにはいられない。しかも1人はここのマンションの住人じゃないのに!--;

日本人女性5人、インド人運ちゃん、メイドのサトちゃんの大所帯は、朝も早くからやいのやいのと大騒ぎ。「給料なんてこれ以上あげなくていいわよっ」「2500ルピーくれ!」等と異様な盛り上がり。しかし時間はない。私はドアの鍵を閉め出発支度にとどめを刺そうとしたその時、赤坂君は通訳した。

赤坂君 「昇給しないなら、明日から来ないとサトちゃんは言っています。」

私 「あっそ。Bye~。」

サトちゃん、ガビーン、硬直。

友人A 「あ~あ。彼女たった今、職を失いました。口は災いの元~。」

赤坂君、苦笑。


私は鍵を閉めながらの返答だったので気づかなかったが、友人曰く、サトちゃんは漫画のように固まっていたらしい。あのですね、一応いい訳しておきますと、別に私、いぢわるしているわけじゃないです。今回のサトちゃんの昇給依頼はお門違い。無駄な討論で人の時間を無駄にするでないよぉ。という気持ちも込めて「もう来なくていい宣言」してみた。それでもまだグジグジ言っているので「話があるなら出直せ(私の旅行あけに)」といい放ち出発ー!!!

ここまで読んで、インド暮らしをしている人なら想像つくと思いますが、旅行明けの稼動日、ちゃんとサトちゃんは出勤してきました、何食わぬ顔して。タダで家に上げるわけにはいかないので、給料は今までどおりだからなと釘を刺す。うなずいたので家に上げた。

私が背中を向けた途端、背後から「2500ルピ~」と聞こえたのはホラー以外のなにものでもない。
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by naoming77 | 2005-10-10 19:54 | インド暮らしなもんで